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執筆者の写真kachirou kano

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未成年閲覧禁止 ゲーム論評「みにくいモジカの子」


 この記事自体に成人向けの表現はありませんが、ゲーム自体がアダルト向けなので、お子様は閲覧禁止です。しばらく前にプレイしてレビューを書こうと思っていましたが、他のことに気を取られて時間が過ぎていました。まずはゲーム本体の情報について。


 責任ある大人は↓へ お子様はおうちに帰ってね


















みにくいモジカの子 制作:ニトロプラス 発売日:2018年7月27日

 2024年9月に他社との協業でRusty Rabbitというゲームが発売される予定ですが、ニトロプラス単独制作での新作タイトルは、この作品が最後となっています。ニトロプラスといえば説明不要の有名メーカーですが、自分はこの作品を2023年末まで知らずに過ごしていました。それまでに遊んだニトロプラスのゲームは沙耶の唄(2003)、君と彼女と彼女の恋(2013)の2作で、後からSTEINS;GATE(2010)を遊びましたが余り没入できませんでした。そこで他のニトロプラス作品を探したところ、どうやら一番新しいらしい本作を見つけたのでした。ニトロプラス公式サイトのビジュアル(1)を見ると、どことなく不穏な雰囲気。神社や鳥居を背景に、中学高校の制服らしき恰好の女の子が並んでいる。学園ものだろうけど、どうせ何か良くないことが起こるんだろうな… ニトロオリジン(年齢制限を伴う表現を含むコンテンツを主に取り扱う新ブランド(2))の方の公式サイト(3)を見ると、より刺激的なビジュアルが目に入ります。不快あるいは怒りの表情をみせる女の子たちの背景に、太目で教科書体のようなフォントで罵詈雑言が書かれています。なんかこう、マゾヒズムがテーマなんだろうか…?見た目からこの白い髪の子が黒幕に違いねぇと勝手に思いつつ、とにかく購入・DLしてみることにしました。


--------------以下内容のネタバレあり--------------


 以下プレイの感想。端から端まで内容に触れると大変なので、印象的な点について。


●音楽について:主題歌はギターがガンガン鳴り響き、その合間を縫って歌声が聞こえてくるようなバランス。こういうもんなのかな?と思ったら、シューゲイザーという音楽ジャンルの特徴だったようです。エフェクトが強くかかっているだけで、ギターをアコースティックに変えてエフェクトを切った場合を想像すると凄く優しい曲に聞こえました。凄く繊細で柔らかいのに、繊細である自分を守るために他人と触れ合うことを恐れる思春期のような心です。ギザギザハートってやつですね。それにしても、本作の曲調がシュー(靴)ゲイザー(見つめるもの)とはなぁ。本編のBGMはいずれも陰鬱な、緊張感をもたらすものが多いのですが、主題歌だけは癒しを与えてくれます。タイトルは「憐」、読み方は書いてないけど「あわれみ」でしょうか。あわれみには2種類あり、かわいそうに思う同情と、愛しく慈しむ愛情です。本作のストーリーを考えると、今回はどちらの意味も含まれているといえるでしょう。

●ビジュアルについて:作画ははましま薫夫先生です。主たる作品はCLOCKUP(4)の「euphoria」「フラテルニテ」など。ニトロプラスでは本作のみ作画を担当されています。狩野が思うに、はましま先生の作画の特徴はやや淡い色使いと、年齢設定に比して幼くない造形です。本作では以前の作品に比べてその特徴が強く表れ、他のゲームとビジュアル面での差別化ができているように感じられます。アダルトゲームでは全年齢向けのゲームよりも女性がより幼く、しかし性的特徴は強調して描かれることが多いです。当然といえば当然ですが、日本人ではあり得ないようなトランジスタ・グラマーが平然と現れます。現代では一般向けソシャゲなどで、一昔前のアダルトゲームに居る様なビジュアルのキャラクターが駅の広告に描かれてたりします。はましま先生が描かれるキャラクターにもナイスバディは居るのですが、現実からの乖離が絶妙な程度に抑えられており、特にノベルゲームで大事なストーリーへの没入感を失わない程度に、読者をとどめてくれるのです。現実離れしたボンキュッボン(死後)が世に溢れかえって陳腐化した現在において、逆にもしかしたら現実に存在するかもしれないビジュアルが、ゲームへの興味と没入を一層引き立てるのです。こんなこと言っておいてなんですが、「えろげー!~Hもゲームも開発三昧~」(5)あたりのビジュアルはそうでもない気がしますね。うーん…

 後述する「モジカ」システムの表現はビジュアル面でも大きな特徴であり、良くも悪くも本作を象徴しています。突然デカデカと文字が表示され、時にキャラクターよりも前にきたり、画面を埋め尽くしたり、激しい動きを伴い見づらい状態になったりします。文字が心理を表す以上その震えや大小があるのは当然ですが、いざ画面に映ると中々グロテスクなほどに目立ちます。快適に遊ぶことを目的にするならこういうシステムにはしないでしょうが、主人公が見ている世界を追体験する意味ではこれが正しいのかもしれません。人の心が小説の文字みたいに、小さく整然と並んでいるはずないのですから。言っていることと思っていることが違うというのもモジカによって感覚的に理解できるのですが、そうはいっても直ぐ理解するのが中々難しい。どちらか一方に集中してしまいがちです。キャラクターの声と心理を同時に理解できるようになったら、僕たちにもモジカが使えるようになるかも?

●システムについて:ゲーム開始直後にモジカ(文字化 モジバケではなくモジカと読む)の力を使うかどうかの操作画面が現れますが、初見では何していいのか判りませんでした。クリックすると主人公が顔を上げ、相手の顔を見てモジカを行おうとします。この人はいつも真下を向いて他人と話してたのか…力を使うと相手の心のうちが文字になって可視化され、主人公はそれを読み取ることができる、という便利システムです。人が複数いればそれだけ文字が増えて見づらくなってしまうため、1対1の場面で使うのが有効な模様。本作はノベルゲームなので、自由に相手とエンカウントして力を使うようなADVパートはありません。本作の操作はこのモジカセッションくらいなので、複雑なことはありません。ただ分岐の条件が難しく、自力では攻略できませんでした。またモジカセッションではあくまで主人公が顔を上げるという動作をするか否かを決めるだけなので、顔を上げたあとの場面でモジカが使えるかどうかは決まりません。これ重要。ちなみに対モジカ戦術として「カンヌキ」という能力があり、これを使っている存在(人・人外)の心理をモジカすることはできません。うーんこれは難敵だ…

●ストーリーについて:常に陰鬱な雰囲気が流れていますが、こういうのを深夜にやると雰囲気がハマって良いんですよねぇ。キャラクターの数だけエンディングが分岐しますが、どこに行ってもまともな未来は無いのが悲しいところ。唯一良いと言えそうなのが真ヒロインのルートで、「僕たちは互いに傷つきながら未来へ進む」という古き良きアダルトゲームの作法で、艱難辛苦の末に一筋の希望を見出す展開です。ビターエンド兼トゥルーエンド的な。基本はマルチバッドエンドゲームで、どの坂道を転がって落ちるかという話になります。真ヒロインのルートで思い出したのが、「君と彼女と彼女の恋」のエンドレス同棲生活パートです。とっ捕まってる間はあれと同様のパートに突入するのかと思ったら、思っていたよりもすんなり脱出できたので少し拍子抜けしてしまいました。ストーリーの流れとしては最も核心に迫り、かつ未来に進むので真ヒロインルートが一番に違いないのですが、個人的な印象で一番強いのは白い人のルートです。モジカの能力の核心には至らないながらも、自分が誰かに・誰かが自分に共感するという意志疎通の本質を見出して幸せな未来へ進む…かと思われました。最後のシーンは結局現実ではないのですが、幸せな未来の割にBGMが不穏なのでやってる最中から「なんか変じゃね…?」という気分でした。あそこまで頑張って、それでも負けるとはなぁ~目いっぱい頑張って試合に負けたあとのような、妙な満足感と爽やかさを覚えるバッドエンドでした。シーン単位では、ギャルのロッカーを漁る最中にあろうことかロッカーに隠れるという謎のスパイパートが一番緊張感がありました。いやぁ見つかっちゃうかと思ったよ(見つかってはいるけどね)

 性的な描写については、残念ながら自分の嗜好とは真反対のシーンがほとんどでした。個人的に、女性を虐げたる可哀想な描写は好きではありません。なのでそういうシーンは普通のシーンと同様に、ストーリー展開の一環として見ていました。ストーリーの背景からして、和やかで幸せいっぱいな描写が少ないのは、当たり前だよなぁ。

●オマケ要素について:真ヒロインルートを見終わるとタイトル画面が変わり、左上の隠しボタンを押してタイピングゲームを遊べます。タイピングというか難読漢字・熟語の読み方を入力するゲームですが、妙に難しい。まだクリアできていません。またクリア後には、ライナーノーツと題して制作スタッフからのメッセージが閲覧できるページへ飛ぶボタンが用意されます。

●総合的印象:新しく斬新なビジュアル・システムを採用しながら、読者を圧迫するニトロおなじみの陰鬱なストーリーを忘れない魅力的な作品でした。遊びやすいゲーム・快適なゲームが良いゲームとするなら、このゲームは良いゲームではないと思います。しかし自分としては既存のフレーム・記号を組み合わせた作品より、フレーム自体の構築や予想できない新しい試みを進めた作品を応援したいです。ゲームの購入からクリア後のオマケ部分まで、作品を十分に享受することができました。購入した金額分の価値は、十分に有ったと考えます。購入して最後までやり切れば、各人なりの感想・手応えが得られると思います。そういう意味で、購入をお勧めしたい。ぜひご検討ください。


(1)https://www.nitroplus.co.jp/game/24-mojika/

(2)https://www.nitroplus.co.jp/news/2021/11617.php

(3)https://www.nitroplus.co.jp/game/mojika/

(4)http://clockup.net/product/

(5)http://clockup.entacom.net/product/eroge/

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