分断を乗り越えるためのイスラム入門
幻冬舎新書
内藤正典著
直近の紛争や戦争に関連する情報を絡めて、イスラム教やイスラム教徒の考え方を簡潔に解説する。簡潔といっても様々な視点からイスラム的解釈や背景の解説が加わるため、内容を覚えて読み進めることは容易ではない(事前にイスラム教について理解していない人は特に)。片手間に読んでいると、内容を十分に覚えていないまま次の内容に進んでしまうので今一つ理解が進まない。空いた時間に少しずつ読んだので、大事な内容が有ったはずだが大半を忘れてしまった。ただイスラム教徒の教義への向き合い方(基本的に自分とアッラーの1対1なので他人は関係ない)とか、現代西洋社会の考え方との差異(進歩主義・民主主義と相いれない点)とか、印象的な解説は記憶に残った。
終盤でイスラム世界と我々の西洋的世界ではパラダイムが違う、という表現があった。パラダイムという単語は技術的革新により起こるパラダイムシフトという単語でしか覚えがなかったので、ここで使われたのは新鮮に感じられた。パラダイムが違うということは、どこかの時点までは一緒だったパラダイムが変わった方(おそらく西洋側)と変わらなかった方(おそらくイスラム側)の存在を意味するだろう。西洋的な進歩主義に基づけば当然パラダイムが変化した方が良いということになるが、実際は良いか悪いかは誰にもわからない。ただ違うということを認識して相手と接さないと、話が通じずお互いに不幸になってしまう。この本を読んだからと言ってイスラムの何を分かった訳でもないが、自分とは違うパラダイムに住んでいる、こういう人たちがいるという事情をうっすら知ることができただけでも良かったと思う。内容の記憶があまりに浅いので、2周目の通読を行いたいと考えている。
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