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  • 執筆者の写真kachirou kano

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タイトル:新型コロナと貧困女子

発行:宝島社

著者:中村敦彦

内容:セックスワーカーの貧困と、COVID-19流行の影響

所要時間:5時間程度

内容:著者のルポでは特定の人種、というか階層の人々にフォーカスが当てられる。男性の底辺階層たる「中年童貞」、女性の底辺階層たる「貧困女子」、そして富と権力を有し、既存の社会構造を利用して他人から搾取する「おじさん(多くは団塊世代)」であり、今回は2番目の貧困女子が主たるテーマ。貧困女子の中でもとりわけ「その日暮らし」を営むセックスワーカーの実例を多数取り上げ、生々しい描写で生活の実態を記す。コロナ流行との関係も多分に盛り込まれているが、基本的にはコレマデのルポと同様。

 中でも記憶に残ったのが、階層の再生産によりどうしようもなく底辺に行き着いた人々と、自らのぞんで底辺に潜り込み、今のユニークな生活をエンジョイしている人々だった。日本では大学受験という「敗者復活装置」によりある程度階層を上げることが可能だが、何かしらの方法で元手となる金銭を得ないとどうしようもない。都市から離れた地域で低い階層に生まれた女性は、筆者のいう男尊女卑の思想の元に大して教育にコストをかけてもらえないため、階層を上げることができないと思われる。地元の暮らしや男性に従属するのが嫌で都市部(主に東京)に来ても、階層は下のまま、結局セックスワーカーの暮らしに行き着く。人生でチャンスが一回も到来せず、しかし人生を変えようとしたもののやはり変わらない人々の存在を、まじまじと認識することになった。

 またセックスワーカーあるいは趣味でセックスをする傍ら小銭を得るという暮らしをエンジョイする人々がいることは驚きだった。そういう人が所属するコミュニティには、独特な援助ないしは互助が存在して人間が生きているという事実が大変興味深い。

 大変失礼ながら貧困女子と交わらぬ、対極に位置する人間としては全くの他人事であったが、一つのノンフィクション、書き物として大変面白く読み終えた。個人的には貧困女子どころか女子の知り合いはいないし、私生活でセックスワーカーに関わることもないので未来的にも他人事であろうと思われる。大変だねぇ。強く生きてください。

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